薬剤師になりたての頃、今振り返るとこちらが間違っていたという疑義紹介もありました。実際に正解はわかりませんが、薬剤師歴が長くなり勉強を続けていた時に「あぁ、そういうことなのか」となった事例を記事にしました。
疑義紹介事例
患者背景
82歳男性
皮膚の乾燥傾向があり保湿クリームを使用している。高齢なので食欲が低下して、水分が不足している。認知機能などは問題なく、誤嚥なども起きていない。アレルギー性鼻炎などはなく、風邪などの症状も起きていない。
追加処方
シプロヘプタジン散1% 朝夕2回
(他には数種類の薬剤の継続投与)
私の考えと疑義照会内容
かゆみに対しての薬剤の追加処方。まだ乾燥の段階ではあるが、高齢者はかゆみの訴えが多いので処方されたと考えられる。そうであれば、シプロヘプタジンは傾眠なども可能性が高く、抗コリン作用などから水分の不足している高齢者には不適ではないか、フェキソフェナジンへの変更を提案
医師の指示
そのままで処方
推察(本当の理由はわかりません)
シプロヘプタジンは抗ヒスタミン作用だけでなく、強い抗セロトニン作用、弱い抗ムスカリン作用を持つ薬剤です。セロトニンは摂食行動と深いかかわりがあり、外側視床下部の摂食中枢において、セロトニンが減少すると摂食が亢進し、セロトニンが増加すると摂食が抑制されます。そのために抗セロトニン作用のあるシプロヘプタジンは食欲亢進の副作用があります。
もしかすると処方医は食欲の低下に対して何とかしたいという考えからシプロヘプタジンの投与に至ったのかもしれません。もちろん、保険適応ではないので、かゆみやアレルギー性鼻炎などで用いられていることと思いますが、私は薬剤選択の一側面だけをみて処方提案をしてしまったのかもしれません。
まとめ
医師の処方に問題があるのではないかという疑念からではなく、医師の処方には何か隠された意図があるのかもしれないという考えで処方内容をチェックする必要がありました。医師と患者の指導内容の聴取に時間を掛けるべきでした。まずはSOAPはSからです。
そしてそれでも疑問に感じれば、改めて処方意図を聞くという姿勢も忘れてはいけませんでした。
尚、1971年に食欲不振・体重減少の改善で効能が追加されたが、1996年に再評価があり、効能効果からは削除されているようです。副作用の項目には食欲亢進の記載があります。