少し前にこんなことを言われました。
今は独立しない方が良いですよね?
私はこの意見に反対です。今回のブログではなぜ「今は独立しない方が良い」に反対なのか、そして独立するのに最適なタイミングとは何かについて説明を行います。
私のブログは面調剤の独立が基本となっております。
独立しない方が良いと主張する方の理由
色々な理由が挙げられますが、ザックリと区分分けすると①運営の厳しさ、②他社の脅威、③将来性、④自己資金などが挙げられると思います。
面調剤の独立に関して考え方について考えたいと思います。
出荷調整で薬が入ってこない
運営上は「自分自身がどうにかできること」「自分自身ではどうにもできないこと」の2つに分けて考えることが重要です。
「自分自身がどうにかできること」を考えるうえで「ヒト」「モノ」「カネ」が重要になります。自分自身が持っている「ヒト」「モノ」「カネ」をどう分配するかを考えることで解決します。
例えば
【運営課題】売上アップ
→患者の満足度を上げれば来るのではないか
→話がうまい薬剤師が必要なので「ヒト」を採用しよう、待ち時間を楽しんでもらえるように待合室に「モノ」を入れよう
→「カネ」を「ヒト」と「モノ」に交換して解決
「ヒト」「モノ」「カネ」を動かすことで解決できる課題は「自分自身でどうにかできること」です。
一方で「自分自身がどうにもできないこと」が存在します。それは原因と解決が自分自身から離れたところにある問題である場合です。こういった問題は「ヒト」「モノ」「カネ」で解決することができません。これを独立の障壁にしてしまうと、「自分自身がどうにもできないこと」を他人が解決してくれるまで延々と待たなければならなくなります。
出荷調整の問題に焦点を当てると、「いつになったら解決するのか」を考えてみましょう。元々は問題が起きてから2年、つまり2022年には医薬品の流通は戻ってきていると予想されていました。しかし2023年となりどうでしょう?改善の見込みは立っていないのではないでしょうか。
誰にも他者が改善してくれるまでのスピードや期限はわからないのです。自分自身の決断の時期を他者にコントロールされることは避けなければなりません。2年前に開業しようとした方が2年経過すると診療報酬改定もあります。
Amazonなどの資本参入で業界が厳しくなる
薬局業界は巨大資本が参入してくる業界となってきました。たしかにこの巨大資本に【すべての】患者を奪われると営業は立ち行かなくなってしまいます。しかし、これはAmazonにとって非常に難しいシナリオです。それはなぜか、ターゲット層です。
下記に健康保険組合連合会が出している医療費の推移についての2017年時点の展望を示します。ここからもわかりますが、1人当たり医療費は、前期高齢者は2015年度の51万円から2025年度には32.7%増の67万円、 後期高齢者は、95万円から2025年度には26.5%増の120万円に増える見通しとなっています。 前期高齢者の1人当たり医療費は0~64歳の3倍程度、後期高齢者は5倍超となっている。
Amazon等がターゲットとしている層は主にインターネットに【強い】世代がメインと思われます。つまり現段階において、前期高齢者~後期高齢者がインターネットに【強い】世代にならないうちはまだチャンスがあります。逆に言えばあと20年後はターゲットのAmazonに奪われていくことを意味します。
だからこそ早く開局しておく必要があります。市場が安定している今、既存の戦い方が通用する今がチャンスなのです。
もう薬局は儲からないからやめておいた方が良い
もう少し自己資金を貯めてから独立した方が良い
過去4回の診療報酬はどのように変化してきた
私のブログではよくやっているモデル患者の作成からしていきたいと思います。今回は2パターンくらいで考えていきたいと思います。
モデル①:生活習慣病モデル(30日処方)
高血圧、糖尿病、脂質異常症を合併していて、4剤内服している60代の男性
2016年改定
調剤基本料1(41点)+調剤料:22~30日分の場合(81点)×3剤+薬剤服用歴管理指導料(41点)→325点
2018年改定
調剤基本料1(41点)+調剤料:22~30日分の場合(78点)×3剤+薬剤服用歴管理指導料(41点)→316点
2020年改定
調剤基本料1(42点)+調剤料:22~30日分(77点)×3剤+服薬管理指導料(43点)→316点
2022年改定
調剤基本料1(42点)+調剤料:29日分以上(60点)×3剤+服薬管理指導料(45点)+薬剤調製料(24点)×3→339点
モデル②:急性期疾患モデル(7日処方)
風邪を引いて抗アレルギー薬、去痰薬を2剤内服している20代の女性
2016年改定
調剤基本料1(41点)+調剤料:1~ 7日目の場合(35点)×2剤+薬剤服用歴管理指導料(41点)→152点
2018年改定
調剤基本料1(41点)+調剤料:1~ 7日目の場合(35点)×2剤+薬剤服用歴管理指導料(41点)→152点
2020年改定
調剤基本料1(42点)+調剤料:7日分以下(28点)×2剤+服薬管理指導料(43点)→141点
2022年改定
調剤基本料1(42点)+調剤管理料:7日分以下(4点)×2剤+服薬管理指導料(45点)+薬剤調製料(24点)×2→143点
過去4回の診療報酬からわかること
経年的に見てもあまり変わりないですね
そうなのです。ですが、ここで注意点があります。
ここで示したのは「何も考えずに算定できる点数」です。何も考えずに算定できる点数はこれから確実に下がっています。つまりこの下落を埋めるために「考えて(能動的に)算定する点数」で補わないといけないということです。
「考えて(能動的に)算定する点数」を例に挙げると後発品体制加算、地域支援体制加算などの薬局機能に関わる点数、さらにかかりつけ、在宅、トレーシングレポート、重複投薬など対人業務に関わる点数となります。
「考えて(能動的に)算定する点数」が各調剤薬局の差になります。「考えて(能動的に)算定する点数」には何が必要なのか。それが「ヒト」「モノ」「カネ」です。
地域支援体制加算、後発品体制加算、無菌製剤処理加算などの項目は近年ではハードルが高くなってきています。
これから「何も考えずに算定できる点数」はさらに下がってきます。そこで「何も考えずに算定できる点数」が残っている今のうちに開局して、「ヒト」「モノ」「カネ」に投資できるように準備しておかなければなりません。
「ヒト」「モノ」「カネ」を貯めてから独立する方が安心ではないか
これは無理です。個人資産を法人資産並みに「カネ」を貯めることは会社員は不可能です。開局していないのに「ヒト」をリクルートすることもできません。最初から「モノ」に投資するような危険な独立はオススメできません。スモールスタートの方が安全性が高くなります。
まとめ
最後まで読んで頂きましてありがとうございます。ご理解頂けましたでしょうか。
もし、このブログを読んでいる方が独立(開局)を考えているのであれば、選択肢は2つしかありません。
悩むと思います。しかし、社長はこれからもずっと選択を迫られます。このスタートで悩んでいるようならきっと社長に向かないのかもしれません。某独立支援企業の方とお話をする機会がありました。どんな案件を用意しても、2000人以上の登録者で反応するのは1%程度、そのなかで独立するという決断をするのは3~4名程度らしいです。
つまり、ほとんどの方が2024年に調剤報酬改定を迎えて「あの頃に独立しておけば…」となるのです。2026年はもっと悪くなるかもしれません。