うつ病患者や、うつ病になりそうな患者にとって薬局だけのサポートだけでは足りないことがあります。そのときに紹介先として患者の状態にあったものを提供することも薬局の1つの機能だと思います。
薬剤師が抱えてしまうと業務に影響が出る可能性があるので、様々な紹介先と連携してサポート体制を組むのが良いのではないでしょうか。
うつ病患者に対するサポート体制
相談
患者さんご自身が病院に行こうかどうか迷っていたり、ご家族や職場の同僚などのうつ病サポートについて悩んでいる際に、さまざまな相談窓口を利用することができます。
保健所
こころの健康、保健、医療、福祉に関する相談、未治療、医療中断の方の受診相談、思春期問題、ひきこもり相談、アルコール・薬物依存症の家族相談など幅広い相談を行っています。
地域窓口(地域産業保健センター)
労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方を対象として、労働安全衛生法で定められた保健指導(長時間労働者への医師による面接指導の相談、健康相談窓口など)の産業保健サービスを提供しています。
精神保健福祉センター
こころの健康についての相談、精神科医療についての相談、社会復帰についての相談、アルコール・薬物依存症の家族の相談、ひきこもりなど思春期・青年期問題の相談、認知症高齢者相談など、精神保健福祉全般の相談を行っています。電話や面接(事前に予約が必要です)で相談できます。
夜間・休日の精神科医療機関
夜間や休日にかかりつけの医療機関が利用できない場合、かかりつけの医療機関がない場合などには、都道府県が設置している精神科救急情報センターなどに相談することもできます。このようなときにも、精神科の医療機関を受診できる体制整備が、各都道府県で進められています。
無料電話相談
働く人の悩みホットライン一般社団法人日本産業カウンセラー協会が開設している電話相談窓口です。職場、暮らし、家族、将来設計など、働くうえでのさまざまな悩みを電話で相談できます。
働く人の「こころの耳電話相談」
働く人の「こころの耳電話相談」では、全国の労働者やその家族、企業の人事労務担当者の方々を対象とした電話相談を行っています。働く人のこころの悩みだけではなくストレスチェック制度などの会社内におけるメンタルヘルス対策などについての困りごとや悩みなどについて相談を受けています。
保障
ご自身やご家族がうつ病になった場合でも、公的な保障制度を活用することで、医療費や生活費などの経済的な負担を軽減できる可能性があります。ご自身の状況に応じた支援制度を調べてみましょう。
傷病手当
企業などで働いている方が、業務外での病気や怪我のために仕事を休まなければならなくなり、給与が支給されなくなった際の健康保険による補償制度です。傷病手当として、最長で1年6ヵ月にわたって給与の一部の金額が支給されます。
勤めている会社などの庶務課に傷病手当金の申請について相談してみましょう。
労災補償
労働者が、通勤を含む業務上の理由で怪我や病気をして休業した場合、休業補償としての補償が受けられます。また、身体障害が残った場合の保障(障害補償)、業務上死亡した場合の遺族に対する年金または一時金の支給(遺族補償)もあります。
自立支援医療(精神通院医療費の公費負担)
健康保険を使用して精神疾患の治療を受ける際、外来による通院、投薬、訪問看護などについて、自己負担分の一部を公的に支援する制度です。本制度による医療費の軽減が受けられるのは、各都道府県または指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所・薬局・訪問看護ステーション)に限られており、入院については対象となっていません。
申請は市区町村の担当窓口で行ってください。
※市区町村によって、担当する課の名称は異なりますが障害福祉課、保健福祉課が担当する場合が多いようです。
利用されている医療機関などが指定自立支援医療機関の対象となっているかどうかは、医療機関におたずねいただくか、精神保健福祉センター、都道府県、指定都市などの担当にお問い合わせください。
高額療養費制度
入院や外来治療による医療費が高額になった場合に、自己負担分を軽減する制度です。患者さんの所得額に応じた自己負担限度額が定められており、それを上回った分は、加入している医療保険から支払われます。
医療費控除
患者さんご自身、または同一生計の配偶者および親族のために支払った医療費が、年間を通して一定額を超える場合、控除を受けることができます。
特別児童扶養手当
精神または身体に一定程度の障害があり、在宅で生活する児童を養育する方を対象に支給される手当です。
お住まいの市区町村の福祉課などで受け付けています。
障害者控除と特別障害者控除(所得税・住民税の控除)
心身に障害がある患者さんご自身や、障害がある患者さんを扶養している方を対象に、所得税や住民税を軽減する制度です。確定申告や、勤め先での扶養控除などの申告書の提出時に手続きができます。
精神障害者保健福祉手帳
精神障害者保健福祉手帳は、精神障害の状態にあることを、重症度に応じて認定するものです。精神障害者の自立と社会参加の促進を図るため、手帳を持っている方々には、さまざまな支援策が講じられています。
精神障害者保健福祉手帳の等級は、1級から3級まであり、市区町村の担当窓口で申請できます。
復職支援
うつ病などのこころの病気が原因で休職や退職をした場合に、復職や就職を支援してくれる施設やプログラムなどがあります。社会へ復帰する意欲が戻ってきたと感じたら、医師と相談したうえで、復職や就職の支援をしてくれる施設やプログラムなどの利用を検討してみましょう。
復職支援(リワーク)プログラム
うつ病を含む精神疾患により休職中の患者さんの復職や、再発による再休職を防ぐための支援制度として、復職支援(リワーク)プログラムがあります。このプログラムは医療機関のほかに、精神保健福祉センターのような公的機関や、NPO法人などの施設でも実施しています。
ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワークの「職業紹介窓口」では、仕事の紹介をはじめ、どんな仕事がいいのか決められない、具体的な求職活動の仕方がわからないなど、就職に関するさまざまな相談を行っています。
精神疾患に限らず患者さんに障害がある場合、障害者専門の相談窓口(専門援助部門)でその障害に応じた相談をすることができ、就職の準備段階から職場定着まで、一貫した支援を受けられます。
まとめ
うつ病のサポート体制は多くのものがあります。うつ病の経過は長くなるので、サポート体制をうまく取り入れながら治療継続を促す必要があります。薬剤師が相談に乗ったとき、服薬指導中に「どのサポートを望んでいるのだろう」と考えて、それによってアプローチを掛けるのが良いと思います。