サービス付き高齢者向け住宅の理解を深める
サービス付き高齢者向け住宅の解説
サービス付き高齢者向け住宅はサ高住と表記されることもあります。
サービス付き高齢者向け住宅が必ず提供しなければならないサービスは、「安否確認」「生活相談」のみです。その他の「食事」、「介護(入浴、排せつの介助など)」、「生活支援(買い物代行、病院への送り迎えなど)」などのサービスが提供されるかどうかは、それぞれの住宅によって異なります。
安否確認・生活相談とは
安否確認は定期的に入所者の安否を確認し、緊急時には医療機関に連絡する体制を取ることを言います。
生活相談は日常生活を送る上での相談、また心身の状態に応じた医療介護を受けるための支援を行うことを言います。
根拠法
高齢者の居住の安定確保に関する法律
受け入れ介護度
自立~要介護5まで様々な方が入所しているのが特徴ですが、施設によっての基準があるために施設ごとの状況の確認は必要になります。特定施設の認定を受けている介護型は要介護や認知症まで受け入れることができますが、一般型の場合には比較的元気な高齢者が多くなると思われます。
薬局との関わり方
高齢者の住居となっているために 介護保険での居宅療養管理指導での算定は可能です。また介護認定のない方には医療保険での在宅患者訪問管理指導での算定も可能です。
ただし、特定施設の認定がある場合(介護型)にはサ高住にいるケアマネが担当になることが多くなりますが、それ以外の場合には各々のケアマネとのやり取りが必要になるために情報などの共有に注意が必要です。
薬剤服用歴管理指導料は43点で算定が可能です(当然ですが、算定要件を満たした場合です)。
営業オススメ度:★★★☆☆
居宅療養管理指導の算定はできます。私自身は以前は積極的に営業を行っている施設でした。実際に私が担当していたのは、施設内で2名の訪問医が担当しているという施設でした。実績という点だけで考えると、比較的効率的に技術料を算定できる施設でした。
それではここでどの程度の算定を見込めるのかをチェックしていきましょう。サ高住には規模は大小様々なので10名前後を担当したとして計算してみます。
モデル患者
80歳男性 糖尿病、高血圧、脂質異常症、認知症
調剤基本料1(42点)、地域支援体制加算(38点)、後発医薬品調剤加算3(28点)、内服薬30日分(77点)、内服薬30日分(77点)、内服薬30日分(77点)、一包化加算(160点)、在宅患者調剤加算(15点)、居宅療養管理指導料(378単位)×2
→技術料1,270点
モデル患者の月の技術料は、1,270点×10名→12,700点となります。
私が担当した施設だけかもしれませんが、サ高住での取り組みはとても難しいという印象があります。住宅ではあるけれど、施設の側面があります。施設での状況を把握したいけれど、誰が取りまとめて把握できているかがわからないという状況がありました。特に食事量などのチェックをする際にも、食事の残などの把握ができていなかったり、服薬状況の確認も配薬まではできても服薬確認まではできていなかったりなど、どこまで施設側で把握ができていてどこからが患者に任されているのかがわからないという悩みがありました。もちろん認知症などもない患者は本人で確認ができますので特殊ケースかもしれません。
ここまでであれば★4つで特養と変わりないオススメ度ですが、ひとつ★を落としています。それが居宅療養管理指導の算定要件です。
令和3年度福岡県介護施設・サービス事業所集団指導より
(参考:https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/145281.pdf)
居宅への訪問における留意点
有料老人ホーム等においては共用の空間(スタッフステーション等)ではなく利用者の居室を訪問してください。
コロナ以降でサ高住のスタッフと話をしていると、居宅までの訪問を避けてもらいたいという意向が複数の施設で確認ができました。感染予防を徹底していても、施設の状況によって入室を拒むケースも確認できています。この場合に指導内容と異なる訪問になる可能性があり、営業活動の優先順位を少し下げて活動するようになりました。
自身で身の回りのことができる方が多いため、ケアが中心となるグループホームと比較して、薬剤師の訪問に対する必要性が少し低いのではないかと感じています。
上記の理由から★3つ(営業をオススメします)とさせていただきました。
サービス付き高齢者向け住宅の営業プラン
施設が抱える現状と課題
様々な介護度の方が入所しているために、スタッフの方は日常対応に時間を使うことが多くあります。そのために服薬管理などは手間になっているケースが多くあるとスタッフの方から意見がありました。
またケアの面においても、施設での考え方にバラツキがあるという印象があります。そもそもの居宅療養管理指導の必要性の有無を理解してもらい対応する必要があります。私個人の意見としては、サ高住には居宅療養管理指導による介入は必要だと考えていますが、施設の考えや利用者の考えが優先になります。
ケアマネが施設のケアマネであれば、施設のケアマネに情報を集めてもらうように依頼が必要になります。施設のケアマネ以外が担当している場合には、その他のスタッフとのコミュニケーションなどもどのように行って日常生活をチェックするかがポイントになります。
以上のことからまとめると2点がキーポイントとなってきます。
サービス付き高齢者向け住宅に介入する際のポイント
誰がキーパーソンとなっているのかを把握したうえで情報のやり取りを行う
施設の薬剤管理状況を把握した営業活動でプランを立てる
居宅療養管理指導で薬剤師は何ができるのかを考える
私がサ高住に対して課題解決として提案しているのは下記3項目です。これらを相手側の課題に合わせて組み合わせて提案しています。この中でも配薬に関しては時間を掛けている施設が多いので、最初にここから提案を実施することが多くなっています。
お届けすることでスタッフの時間的な拘束を避けられる
配薬を薬剤師が管理することで間違いが少なくなる
居室に訪問することで残薬の確認や副作用のチェックができる
提案から営業していこう
もっとも簡単な提案は「残薬管理」「配薬管理」です。
残薬管理の提案
私の場合には介入前に残薬の使用期限チェックと廃棄を行っています(現在介入中の薬局が行わないのであれば)。営業段階で何か頼まれることができれば、次の段階に進みやすくなります。
さらに残薬状況から残日数の調整までを提案、さらに処方日数などの医師とのすり合わせを実施してなるべく施設内に薬が溢れないようにを意識して提案していきましょう。
配薬管理の提案
次に配薬管理の提案です。
できる限り特養看護師の手間を減らすことを提案するために、他科診療科をホチキスで繋いだり、2週間ごとにセットして持ち込んだりなど、看護師が薬剤管理について何も考えなくてよい状態に近づけていくことが重要です。
配薬に関しては下記資材での提案を行っています(貸与する形を取っています)。
これなら薬局内で完結できるために施設内での作業を減らすことができます。
これを必ず使用すると言うわけではなく興味を持ってくれたらというイメージです。
外堀を埋めて切り替えよう
最後の仕上げです。最後までしっかりと行うことで切り替え後の運営もスムーズになります。外堀をしっかりと埋めて最後までぬかりなくやっていきましょう。
ステップはあと2つです。もう少しで切り替え完了です。
医師からの切り替えの承諾
Drとの面談を通して、医師の治療方針などの把握に努めましょう。情報のやり取りをどうするか、後発品への考え方はどうかなども聴取しておくと良いでしょう。
処方箋のやり取りについても確認を行うようにしましょう。
施設の事務方との請求等のすり合わせ
請求などの方法についても確認を行っておきましょう。事務方と仲良くしておくといざという時に助けてくれます。事務方に対しても少しでも楽になるような提案を心がけましょう。
この記事のまとめ
ここまで読んで頂きまして誠にありがとうございます。
サ高住に関しては実際には各県によって大きく取り入れ方が異なっています。自身の薬局の環境が、サ高住が一般的な地域なのか、サ高住がまだ戸数が少ない地域なのかで今後の活動自体も変化すると思います。
下記リンクで都道府県別のサ高住について確認してみても良いかもしれません。
出典:サービス付き高齢者向け住宅情報提供システム
https://www.satsuki-jutaku.jp/journal/category/news
令和3年度動向:https://www.satsuki-jutaku.jp/doc/system_registration_01.pdf
コロナ後の壁としては「居室への訪問」となっていて、これさえクリアできれば、グループホームへの営業と大きくは変わらないと思われます。実際の介入に関しては、介護度の高いグループホームの方が、施設への提案事項や医師に対しての提案事項が多くなる傾向はあります。
各施設について説明を記載してきましたが、どの施設も中盤に書いてある提案事項は同じだということがわかって頂けると思います。その施設でも課題は共通です。同じ方法は使い倒した方が効率的です。
最後になりますが、この記事からサ高住に営業に行こう、サ高住について調べてみようと思って頂ければ幸いです。サ高住についてさらに調べたい方は下記リンクは参考になります(平成28年の資料なので少し古いですが、方向性や問題点などは抽出できます)。
出典:高齢者向け住まい及び住まい事業者の運営実態に関する調査研究
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/71_nomura.pdf
この資料からサ高住の入所数が平均30名、約35%が訪問を受けていると仮定して、モデル患者の保険点数の計算を行っています。
それでは営業を楽しんで!