利尿薬について見てみよう。循環器の分野で幅広く使用されているから、効果も副作用もチェックしよう
基本としては、腎臓は原尿が約150L作られてから1.5Lに濃縮していく機能を持っているから、尿を増やすのは腎臓の濃縮の過程を抑えることを目的として作用している。原尿の中には、水分や糖、電解質など尿として排泄してはいけないものも含まれているので再吸収して体に取り込んでいる。腎臓の機能を抑えると電解質など失われる可能性がある。
利尿薬の作用機序
糸球体濾過量の増加
腎臓の循環不全のような患者に強心薬を用いると循環機能が改善して尿量が増えるなど効果がある
輸液は循環血流量を増やして、膠質浸透圧(血漿蛋白による浸透圧:血管に水を保とうとする圧力)を低下させる、血圧上昇も引き起こすので、結果として利尿作用を引き起こす
尿細管再吸収抑制
主にNa⁺の再吸収によって尿量を増加させる。近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管に存在するイオンチャネルやイオン共輸送体が個々の薬の作用部位になっている。
原尿は前に書いた通り150Lくらいあって、それを濃縮していくので、糸球体濾過量を増加させるよりも、再吸収抑制の方が効果的(薬剤の作用機序として有効)なのがわかるね
利尿薬の種類
サイアザイド系利尿薬(チアジド系利尿薬)
トリクロルメチアジド
ヒドロクロロチアジド
インダパミド
トリパミド
メフルシド
作用機序
作用部位:遠位尿細管、接合尿細管(遠位尿細管は糸球体濾過されたナトリウムの約7%を再吸収)
作用点:Na⁺/Cl⁻共輸送を抑制
遠位尿細管は皮質部に存在し、尿濃縮には関わらないので、水利尿は伴わない
Na⁺が水に比して多く失われるので、低Na血症になる頻度が高くなる→減塩と同様の効果を期待できる
Na⁺が排出されるので、結果K⁺も排出される(Na⁺とK⁺の交換反応亢進)
Na⁺が排泄されるので、結果としてレニンアンジオテンシン系の活性亢進
適応症
中等度の利尿薬
減塩と同じ効果を期待できるので、高血圧治療薬として用いられる
腎性尿崩症
副作用
低K血症:Na⁺とK⁺の交換反応亢進
高尿酸血症:ループとは異なる機序で上昇。体液量の減少の可能性もあり
脂質異常症:機序はあまりわかっていないみたい
耐糖能異常:PPARγ活性低下の可能性(?)K⁺の排泄によって膵臓ランゲルハンス島のインスリン分泌機構が低下(?)体液量減少とCO低下により交感神経系が賦活化され肝臓と筋肉へのブドウ糖取り込みが減少(?)
ループ利尿薬
フロセミド
トラセミド
アゾセミド
作用機序
作用部位:ヘンレ係蹄上行脚に作用(通常は糸球体濾過されたナトリウムの約30%と大きな量が再吸収)
作用点:Na⁺/K⁺/2CL⁻共輸送体阻害によって、Na⁺とCl⁻の再吸収を抑制して、尿濃縮機構を抑制
糸球体濾過量の20~30%もの水とNaClを尿中に排泄させて、強力な利尿作用を起こす
プロスタグランジンの生成促進→腎血流量の増加とレニン分泌増加→利尿作用(NSAIDsが利尿薬抵抗性を示す機序にも関わるので処方されている患者には注意)
トラセミドだけは抗アルドステロン作用を有して低K血症を起こしにくい
血漿蛋白結合率が高い点に注意が必要
適応症
高血圧症
浮腫
うっ血性心不全に伴う肺うっ血
副作用
低血圧、低K血症、低Cl⁻性アルカローシス:強力な利尿作用による急性の脱水、電解質消失
高尿酸血症:尿酸と同じトランスポーターを競合するために尿酸排泄が減少
聴覚異常:アミノグリコシド系抗菌薬などの聴覚障害を起こしやすい薬剤との併用に注意が必要
カリウム保持性利尿薬(抗アルドステロン薬)
スピロノラクトン
エプレレノン
トリアムテレン
作用機序
作用部位:アルドステロンが皮質部集合管でNa⁺の再吸収、K⁺とH⁺の排泄を促進
作用点:アルドステロン受容体に結合して作用を抑制
血中アルドステロン値が上昇しているときに最も強く働く(原発性アルドステロン症などにも使用)
長期の利尿薬の使用でNa⁺が低下した結果、アルドステロンの上昇にも有効
※トリアムテレンは遠位尿細管、接合部尿細管、集合管でのNa⁺チャネル抑制
適応症
高血圧症
浮腫
副作用
高K血症:K摂取量が多い場合や腎機能低下時には注意が必要
女性化乳房:高アンドロゲン作用、エストロゲン作用を有しているので長期投与の場合には注意が必要。男性の場合では胸の張りや擦れることでの痛みを伴う場合があるので注意が必要
炭酸脱水酵素阻害薬や浸透圧利尿薬
アセタゾラミド
作用機序
CO₂+H₂O ⇄(※) H₂CO₃ ⇄ H⁺+HCO₃⁻ (※炭酸脱水素酵素の作用点)
アセタゾラミドは近位尿細管に作用してNa⁺-H⁺の交感が抑制される。
Na⁺の再吸収は抑制されて、HCO₃⁻の排泄が増加する。
HCO₃⁻の排泄増加によって、尿がアルカリ性になる。その結果、脂溶性の弱有機酸の排泄促進。
遠位尿細管でのK⁺の分泌増加によって、K⁺の排泄が促進
適応症
緑内障の治療での眼圧低下、てんかん、肺気腫における呼吸性アシドーシスなどに使用される
炭酸脱水酵素阻害薬や浸透圧利尿薬
D-マンニトール
濃グリセリン
イソソルビド
通常なら近位尿細管でNa⁺が能動的に再吸収されて、水が受動的に血管側に再吸収される(等張性を保つため)。浸透圧利尿薬を投与すると管腔内の浸透圧が増加。等張性を保つために血管側の水分を管腔内に留める。その結果として利尿作用をきたす。
緊急時の急性腎不全の予防、脳浮腫、脳圧・眼圧亢進の治療、腎結石時の利尿など。イソソルビドはメニエール病に適応を持つ
バソプレシン拮抗薬
トルバプタン
作用機序
作用部位:バソプレシンは集合管のバソプレシンV₂受容体に作用して水の再吸収を促進
作用点:トルバプタンはバソプレシンV₂受容体を阻害して、水チャネルの働きを抑制することで、電解質の排泄を増加することなく水の排泄を増加して水利尿を示す(この点が心不全における作用でとても重要)
適応症
心不全や肝硬変における体液貯留時や常染色体優性多発性嚢胞腎
副作用
腎不全
血栓塞栓症
脱水、高Na血症:適切な水分摂取などを注意することが重要
まとめ
作用部位と電解質の移動
レニンアンジオテンシン系
参考書籍
ビール飲みながらブログ読んでたらトイレに行きたくなりました。トイレに行ってきます!
アルコールはADH分泌抑制によって、集合管の水透過性抑制を示すね。結果として尿の濃縮抑制が起きて利尿に作用するね。ってマジメにここまで書いたのに最後で台無しですよ。