昨日の記事でボーナスの支払いに現金が不足しそうな時があったと書いていたのですが、「特に融資は受けずギリギリで間に合いました」という点になんとなくモヤモヤしていました。もっと大変だったような気がするので、よく思い出してみました。そのときに頭の片隅に置いていた「黒字倒産の回避」について記事にしました。
黒字倒産とは
会社経営を続けられない状態を倒産といいます。その倒産が赤字が続いていて倒産するのではなく、黒字なのにもかかわらず倒産することを黒字倒産と言います。
黒字なのに倒産?
医薬品業界は卸への支払いサイトの設定、社会保険診療報酬等については2か月以内に保険給付の支払いがあるなど、支払いと収入の時期がわかりにくいので、単純に考えてみましょう。
最初の手持ち100万からスタート
1月1日:150万円分の薬を購入(翌月末支払い)
1月15日:200万円の売り上げ(翌月25日入金)
2月末の残金:150万
利益50万円の黒字
最初の手持ち100万からスタート
1月1日:150万円分の薬を購入(翌月末支払い)
2月15日:200万円の売り上げ(翌月25日入金)
2月末の残金:ー50万円
利益50万の黒字倒産
このように現金がなくなって支払いができなくなる場合に倒産となります。
薬局が黒字倒産になる場合
主な理由は過剰な流動資産が多いでしょう。つまり、過剰在庫により現金化できない薬剤が多く、資金の回収ができていないというケースです。現金が豊富にない限りは過剰な在庫を持ち続けるということは経営的なリスクにも繋がります。
黒字倒産を避けるには
意識するのは仕入、在庫、販売、回収の流れです。
仕入れ
この流れをもとにいつお金が入って、いつお金が出ていくのかを意識することが重要になります。そこで自身の資金状況から卸への支払いサイトを設定することが重要です。私の場合は支払いサイトは2ヵ月です。
医薬品卸は医療機関に対する金融機能も有していると考えられます。14年度の日本の月平均医薬品販売額は約0.7兆円、医療機関が卸に支払う平均支払いサイトは約3カ月であるので、医薬品卸は2兆円超の債権を抱えていることになります。
そのため国内での保険制度上、卸がいなければ薬局経営は難しいと思います。
在庫
幸いなことに薬局の場合は薬剤の返品が可能である場合があるので、定期的に在庫を見直すことによって黒字倒産ような事態を避けることは可能です。
ちなみに会計上ですが、棚卸を行う理由はこの不良在庫の処理以外にないと思います。
販売
販売時に高付加価値を行うことが重要です。技術料などを意識した販売を行います。
回収
2ヵ月後に医業未収金が振り込まれます。遅滞の無いように請求することが重要です。2ヵ月後の振り込みまでに資金の流出がどの程度なのか把握しておくことが重要です。
このサイクルがうまく回らなくなったら
急な資金流出などで、この仕入、在庫、販売、回収でも対応しきれなくなったら、銀行等からの資金の借入を検討します。実際には減価償却などによって、会計的に赤字になっているけれど、資金自体は確保できているということもあります。そのために、現金を意識した管理も併せて行うことが重要です。
まとめ:思い出したこと
前回のボーナスで資金ショートが発生しそうになったとき、「なんとなく」乗り切ったわけではありませんでした。7月賞与の意識した際に資金が不足しそうになった時点で、6月の購入を全店舗で絞り、不良在庫を一斉に返品しました。そのことによって流動資産の額が減り、現金を多く持つことができました。そのことで7月のボーナスで資金が出たとしても、8月の支払いを抑えることができ、最終的に資金の確保につなげることができました。
振り返ると忘れてしまっていることも多くありましたが、お金の流れがどのようになっているのかがわかるだけで対策も一部は可能です。
黒字経営はとても重要です。しかし、黒字よりももっと重要なことは現金の確保です。現金が減っていないかという点を押さえて、設備投資など行うことが重要です。