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面調剤が良いか、門前調剤が良いか

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この記事のポイント

「面」「門前」独立を考えている方はこの2つのパターンで迷われるケースがあると思います。実際にどのくらいの収入があるのか、どの程度の人員で回すことができるのか、実際にどのくらいの儲けが出るものなのか気になるのはその点ではないでしょうか。今回は実際の店舗成績から見てみてください。

結論から言えば、どちらも正解です。自分のスタイルに合った形での選択を行うことが重要です。

とても数字の多い内容です。数字が見たくない方は「どちらも正解」の結論だけわかって頂ければ幸いです。

年間の収支から面調剤と門前調剤を比較してみた

事前情報

私は4店舗経営をしていますが、完全面調剤(集中率40%未満)が2軒、門前あり面調剤(集中率70%)が1軒、完全門前薬局(集中率90%以上)が1軒という構成になっています。今回は完全面調剤と完全門前薬局を比較してそれぞれの特徴と収支について記事にしていきます。

年間収入

私のブログでは一貫して技術料だけをプロットする方法を取っていますので、年間収入は年間技術料で置き換えて考えています。そのため、実際にはこの数字にプラス薬価差益がありますが、在庫リスク等を除いた収益計算として考えてください。

ちなみに初年度でなくコツコツと積み上げてきた7年目(成熟期)の結果なので、その点をご留意ください。

面調剤

処方箋枚数:11,480枚

技術料:3,733,600点

門前調剤

処方箋枚数:17,230枚

技術料:5,082,700点

2店舗の収入に対して考えられること

最初に2店舗の収入の大前提として「どちらでも生活できるくらい収益は十分に発生している」ということを置いたうえで差を見て頂ければと思います。

2店舗間の1枚当たりの技術料単価は面調剤が高くなっています。

面調剤は主なターゲットが慢性疾患患者のためにこの傾向が強くなります。また、1人1人の応対に時間を掛けられるため、加算などのハードルも比較的取りやすい傾向があります。吸入指導、ハイリスク、乳幼児など時間の掛かる服薬指導や、服薬情報提供やフォローアップなどの対人業務に時間を割ける点がポイントになります。

一方で面調剤と門前調剤を比較すると、処方箋枚数は門前調剤の方が多くなっています

立地などもあり、一概には言えませんが、この傾向は多くで見られると思われます。1店舗だけで集患に取り組むのと、医院と薬局が連携して集患に取り組むのでは費用面でもPR力でも圧倒的に門前調剤が有利です。

年間支出

支出面においては、面調剤も門前調剤も具体的に差が出るのは人件費の一択です。

個々の店舗によってテナント費に違いが生じてはいますが、大都市の一等地でなければ十数万円/月くらいの誤差しかありません。「面調剤は良い立地」ということも「門前調剤は高いテナント」というわけでもないので、この立地に関しては優劣の付けられるポイントではないでしょう。

また。その他の経費としての光熱費や機材などに関しても「面調剤」「門前調剤」の2店舗の特徴から大きく異なることもありません。

やはり、何名で店舗を回しているかという点「人件費」がポイントになります。

※下記に出てくる【10時間パート】は2000円×10時間×52週→104万くらいなので扶養内パートを表しています。

面調剤

管理薬剤師1名+10時間パート薬剤師+事務1名です。

これはあまり参考になりません。この店舗は私が担当しているので、役員による長時間労働でカバーしています。通常だと薬剤師1.5~2名+事務2名くらいが適切だと思います。私の店舗は事務員が優秀なので助かっています。

門前調剤

薬剤師が管理薬剤師1名と常勤薬剤師1名+フルタイムパート1名+10時間パート2名+事務員2名で構成されています。シフト勤務になっています。

この人数で残業も月間4時間/人程度で回すことができています。こちらは現在の実数で充足できているのではないかと思います。皆さん優秀なので助かっています。

2店舗の人員配置について考えられること

ここで単純化して計算してみたいと思います。

ざっくりと計算してみましょう。実際の給与をすべて記載することはできないので、仮として年収を置いてみると、管理薬剤師を800万円、常勤薬剤師を650万円、フルタイムパートを550万円、事務員を350万円、10時間パートを100万円で計算してみたいと思います。

残りの金額=年間技術料-給与となるので、各店舗で見てみたいと思います。

面調剤

37,336,000-(8,000,000+3,500,000+1,000,000)
⇒24,836,000円

門前調剤

50,827,000-(8,000,000+ 6,500,000+ 5,500,000+3,500,000×2+1,000,000×2)
⇒21,827,000円

ここでは単純化させるために計算式に入れておりませんが、本来は支出の計算は会社負担として計算する必要があるので、個々の年収に法定福利をプラスしておく必要があります。

法定福利費をザックリと計算するには(給与+賞与)×0.15で計算していくと会社負担額に近くなります。誤差はありますが、ザックリでいいので、人件費を算出するときの指標にしてみると良いでしょう。

ちなみにどちらの薬局もこの期に関しては、給与以外の販売費及び一般管理費は約1,000万円でした。給与を先ほどに固定したと仮定すると、ざっくりと面調剤の営業利益は14,836,000円、門前調剤の営業利益は11,827,000円となります。 この数値は薬価差益を無視した金額になっているので、実際の額よりも少なく出る傾向がありますので、その点はご留意ください。

あくまで参考までです。ここから何が言いたいわけでもありません。

アイン調剤グループが1,134店舗あり、営業利益は10,932(百万円)と公表されているので、単純に割ると1店舗当たりの営業利益は964万円/年となります。

あくまでも参考です。1店舗当たりで割っても仕方がないことですので、何が言いたいわけでもありません。

小規模の面調剤でも、同じ程度の営業利益を出せることは1つの基準になるのではないかと思って例を挙げてみました。

上記からメリットとデメリットを考えていきましょう

このブログの結論:面調剤と門前調剤はどっちが良いか

このブログの数字からも最終着地に関しては大きな違いは見られません。門前調剤が圧倒的に売り上げで優れているわけでもなければ、面調剤が素晴らしいという結果でもありません。少なくとも、どちらの選択を行ったとしても、技術料だけで固定費を支払えるくらいには成長を見込めます。

この記事の内容とは少しズレますが、初速は門前調剤の方が圧倒的に早いです。独立する際に面調剤を選択した場合には長期戦になることを念頭に置いてスタートする必要があります。

どんな方が向いているのかを考える

面調剤に関しては、薬剤の幅が広くなるので、調べて解決策を出すのが好きな方、また、薬局単独での集患になるので、じっくりとリピーター率を上げる工夫を考えられる方が特に向いているのではないかと思います。

一方で門前調剤に関しては、人を束ねる能力に長所がある方、医師への根回しや業務の連携などの提案ができる方は特にその能力を発揮できる環境だと思います。

まとめ

実は、このブログを書きながら、門前調剤の技術料が爆発的に伸びていることに驚きました。数年前にM&Aで購入した薬局でしたが、その時は「かかりつけ不可」「地域支援体制加算の要件不可」「在宅不可」という案件で格安でした。スタッフはそのままに、管理薬剤師を信頼できる方にお願いしたところ、「かかりつけの環境が整う」「地域支援体制加算の算定」「在宅件数が二桁応需」となりました。

つまり、管理薬剤師が方向性を安定させてくれたことが、そのまま技術料に反映することができていると思っています。

今回のブログタイトルは、面調剤と門前調剤を対比的に見るような構造になっていますが、本質としてはどちらも同じ方向性で考えて問題はないと思います。それは薬局ができる仕事を増やすこと、薬局のファンを作ることの2つだと思っています。そのために、結論としては、どちらも正解というのが私の意見です。