念のためにWHO癌疼痛4原則
- 経口的に(By mouth)
可能な限り、経口投与で行う。飲み薬を飲むことができなくなった場合には、貼付剤あるいは坐剤や注射剤を使います。 - 時間を決めて (By the clock)
投与は適正な決まった時間に投与する。痛みが取れるまで段階的に増量する。薬の効果がなくなる前に次の投与を行う。 - 患者ごとに(For the individual)
患者個々の痛みのマネジメントは、上記の2つの事項とともに、痛みの種類、痛みの場所、最適な治療の決定について、注意深く評価する。適切な投与量とは、その患者が納得するレベルまで痛みが取れた量である。 - その上で細かい配慮を(With attention to detail)
1日の最初と最後の投与は、患者が起きる時間と寝る時間に行う。理想的には、患者の鎮痛薬のレジメンは、患者や家族のために過不足なく書き出されるべきである。レジメンには、薬剤名、使用の理由、投与量と投与間隔を記載する。それぞれの薬に対して、起こり得る副作用について患者に注意するように指導する。
最近緩和医療に触れていなかった薬剤師からすると「あれ?5原則じゃなかった?」と疑問に感じる方も多いでしょう。実は2018年に「除痛ラダーに沿って効力の順に(By the ladder)」が削除されているので、3の患者ごとにに統一されているイメージになります。
麻薬の注射とは何か
今日の話題として取り上げる麻薬の注射は経口ができなくなってしまった方、つまり注射以外の選択肢が難しくなった方の在宅での麻薬管理を行う際の注意点です。
下記の日本ホスピス財団のHP上に掲載されているグラフではありますが、今回の対象患者はグラフの右寄り(死亡まで0日)に近いところにいる可能性が高くなります。グラフからもわかる通りですが、痛みよりも全身倦怠感や食欲不振が頻度として高くなっていることがわかります。そのために投与経路が経口ではなく注射になるのです。
グラフからも読み取れることは、麻薬の注射の処方箋が来てから焦っても遅いです。ある程度準備をしたうえで用意をして対応しなければなりません。そのための記事になっています。
医療用麻薬の注射の投与経路
持続静脈投与
静脈路が確保されている
皮下注による皮膚合併症が存在する
持続皮下注
可能な限り持続皮下投与を選択
持続皮下投与では医師等の指導により患者やその家族での抜針や注射針の刺入が可能であり、在宅においても使用できるものもある
持続皮下注のデバイス
デバイスには下記の2つの特徴があります。
- 中身が取り出せない
- 投与量を変更できない
デバイスの例
- CADD-Legacy PCA
- テルヒュージョン(PCA機能付)
- 小型シリンジポンプTE-361
麻薬の注射が出たときに忘れてはいけないポイント
麻薬注射剤については、麻薬施用者から指示を受けた看護師に対してはアンプルのまま渡すことができますが、患者や患者家族、ホームヘルパー等には薬液を取り出せない構造で、注入速度の設定を変更できない状態で交付してください。
在宅でやり取りを行う場合には看護師との連携が必要になります。時間を指定した待ち合わせを行う必要があるので時間管理に注意が必要です。もしくは薬局が充填を行う必要があります。
ちなみに私は恥ずかしながら充填業務を行っていないので、すべて待ち合わせて看護師さんに現場での充填をお願いしています。
麻薬の残液回収後にすること
患者が亡くなってから、もしくは濃度の変更などで返却された持続注入器は使用の有無にかかわらず、施用残として取り扱ってください。その際、患者氏名、返却および廃棄の年月日、品名等を帳簿に記載する必要があります。もし、患者自身が廃棄したとの報告を受けた場合には、その旨を備考欄等に記載してください。
この廃棄後は調剤済み麻薬廃棄届の提出の必要がないので注意が必要です。
まとめ
在宅へのニーズが高まっている中、在宅に興味はあるけれど踏み出せないという方も多いのではないでしょうか。正直なところ、日経DIを読んでいても、スタートにしてはレベルが高すぎて焦ります。緩和医療に関する薬局の文献なども個人のレベルではなく、企業としてのバックアップがないとできないレベルの発表も多いのが事実です。
そこまでの知識がなかったとしても踏み出すうちにわかることもあります。
私自身は「国内の在宅医療を牽引してやる」なんで気概もありません。ただ、私の目の前にいる患者が末期の癌になったときに「私はできません」とだけは言わないように在宅医療にも取り組んでいます。麻薬の管理に関しては、基本的なことを間違うと法を犯す事態に発展してしまいます。まずこのくらいの記事から違反にならないだけの知識を身に着けてください。
薬剤師は在宅麻薬の現場でも頼られることは多くあります。医師や看護師と連携を取れるだけの最低限のルールを身につけておいてください。医療材料などは各地域、各医療機関によって異なる印象です。私の地域では医療機関からの持ち出しでの対応になっていますので、実際にスタートするときには細かいところまで医療機関に確認してください。