ワクチンについての興味が高まっている中なので、薬剤師もワクチンの知識は持っておかないといけません。たまにワクチンについて質問されることがあるのですが「ワクチンのことはわかりません」では信頼に関わるので特徴だけでも理解しておくと良いでしょう。
現在使用されているワクチンの種類と特徴
生ワクチン
特徴
生きたウイルスや細菌の病原性(毒性)を、症状が出ないように極力抑えて、免疫が作れるぎりぎりまで弱めた製剤。自然感染と同じ流れで免疫ができるので、1回の接種でも充分な免疫を作ることができます。ただ、自然感染より免疫力が弱いので、5~10年後に追加接種したほうがよいものもあります。ワクチンの種類によっては、2~3回の接種が必要なものもあります。副反応としては、もともとの病気のごく軽い症状がでることがあります。
種類
ロタウイルス感染症、結核、麻しん(はしか)、風しん、おたふくかぜ、水痘(みずぼうそう)、黄熱病
薬剤師がチェックするポイント
免疫抑制薬(タクロリムス、シクロスポリン、ミゾリビン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチルなど)の添付文書に併用禁忌薬として記載されています。米国小児学会(American Academy of Pediatrics)の最新感染症ガイド(Red Book)でも「弱毒生ワクチン接種は免疫抑制薬中止後3ヶ月までは避けるべき」と書かれています。
しかしながら国立成育医療センターの医師の「免疫抑制薬内服中患者への弱毒生ワクチン接種、全国実態調査を開始」という記事もあるように、今後の流れは変わっていく可能性があるので、情報の更新に注意が必要かもしれません。
不活化ワクチン
特徴
不活化ワクチンは、ウイルスや細菌の病原性(毒性)を完全になくして、免疫を作るのに必要な成分だけを製剤にしたものです。接種しても、その病気になることはありませんが、1回の接種 では免疫が充分にはできません。ワクチンによって決められた回数の接種が必要です。
種類
B型肝炎・ヒブ感染症・小児の肺炎球菌感染症・百日せき・ポリオ・日本脳炎・インフルエンザ・A型肝炎・髄膜炎菌感染症、狂犬病
トキソイド
特徴
感染症によっては細菌の出す毒素が、免疫を作るのに重要なものもあります。この毒素の毒性をなくし、免疫を作る働きだけにしたものがトキソイドです。不活化ワクチンと同じく、数回接種して免疫をつけます。
余談ですが、ナノ粒子を用いた形でトキソイドの新しい形も出てくるのかもしれません。
参考:https://www.nature.com/articles/nnano.2013.254
通常、毒素は化学的または熱的に不活化される。しかし、こうした不活化処理によって毒素の構造が変化するため、ワクチン接種の有効性が低下する恐れがある。
Liangfang Zhangたちは、赤血球膜で覆われたナノ粒子を用いて毒素を捕捉することによって、ブドウ球菌α溶血素の毒素構造を維持する方法を開発した。この毒素捕捉法で、免疫応答誘導効率を維持しつつ、毒素の毒性を中和することができる。
種類
ジフテリア、破傷風
mRNAワクチン
特徴
新型コロナウイルスが細胞に感染するときの足がかりとなるスパイクたんぱく質を作るための遺伝情報「mRNA」を投与します。体内でスパイクたんぱく質を作ることで、免疫の働きでウイルスを攻撃する抗体を作るよう促します。
種類
COVID-19ワクチン(ファイザー)、COVID-19ワクチン(モデルナ)
実用化はされていませんが、海外において狂犬病、HIV, HPV, ジカ熱, チクングニア熱などに対する感染症予防mRNAワクチンの臨床試験が2017年以降に実施されています。
ウイルスベクターワクチン
特徴
ウイルスのスパイクたんぱく質を作る遺伝子を無害な別のウイルスに組み込み、そのウイルスごと投与します。すると、人の細胞に無害なウイルスが感染して新型コロナウイルスのものと同じスパイクたんぱく質が作られるようになり、それを受けて免疫の働きで抗体が作られます。
種類
COVID-19ワクチン(アストラゼネカ)、エボラウイルスワクチン
まとめ
新しい形のワクチンが出てきています。それに伴って、患者は不安などから薬剤師に相談が飛んでくる可能性もあると思います。実際にコロナワクチンでは正しいのか正しくないのかわからない情報が溢れかえっています。「わかりません」だけでなく、自身で最新の情報を入手して正しい知識を提供してください。
薬剤師の予防接種の可能性は2021年現在はありませんが、いつか来るかもしれないということも念頭に置いてワクチンの知識も整理しておくと良いのではないでしょうか。
最後になりますが、日々の勉強した内容や雑記などまとめて毎日ブログにしています。Twitterもフォロー頂けると継続の励みになりますので、もしよろしければよろしくお願いします。