ACE阻害薬を見ていこう。意外と使われている範囲が広くて、イメージとしては心臓のエビデンス、高齢者への誤嚥性肺炎の予防を意識して使用されているケースが多くあるね。
高血圧とアンジオテンシン
アンジオテンシノーゲン→(レニン)→アンジオテンシンⅠ→(ACE)→アンジオテンシンⅡとなり、アンジオテンシンⅡがAT₁受容体に結合すると高血圧に関与する様々な作用が起きる。
- 細動脈への直接作用による血管収縮
- 交感神経刺激伝達の増強による血管収縮
- アルドステロン分泌促進を介するNa⁺・水再吸収の増加と体液量の増加
- 細胞の遊走・増殖→血管壁の肥厚
- 心筋細胞の肥大→心肥大
- 線維芽細胞による細胞外マトリックス産生
→結果:血管壁の肥厚・線維化、心肥大・線維化の原因
つまりARBはアンジオテンシンⅡを受容体に付かなくする、ACE阻害薬はアンジオテンシンⅡの産生を抑える薬剤なので、この作用の逆を考えれば良いだけ。ここだけ抑えてあとは肉付けをしながら勉強を行っていこう。
ACE阻害薬
ACE阻害薬の作用機序
アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡに変換する酵素ACEを阻害する。結果としてAⅡの産生を抑えることで血管収縮を抑制する。ACE阻害薬はキニンを分解するキニナーゼⅡと同じためにブラジキニンを産生してしまう。ブラジキニンの作用によって、副作用の空咳などが発現する。このブラジキニンも血管内皮細胞のB₂受容体を介してNO産生、プロスタサイクリン合成を増加させて血管拡張することでARBにはない効果も期待できる
ACE阻害薬の副作用と注意事項
ACE阻害薬での特徴的な注意点はいくつか挙げられる。
- Kの上昇
- 妊婦に禁忌
- ブラジキニンが増量することによる空咳が20~30%という高頻度で発生
- 血管神経浮腫が生じて呼吸困難になることがある(まれに)
ACE阻害薬の種類と特徴
エースコール
- 一般名:テモカプリル
- 腎実質性高血圧症、腎血管性高血圧症にも適応を持つ
- 胆汁・腎排泄型
タナトリル
- 一般名:イミダプリル
- 1型糖尿病に伴う糖尿病性腎症に適応を持つ
- 腎実質性高血圧症に適応を持つ
- 咳(空咳)の頻度は少ないとされる
レニベース
- 一般名:エナラプリル
- 腎排泄型
- 慢性心不全、腎性高血圧、腎血管性高血圧症、悪性高血圧に適応を持つ
- 吸湿性があるため、湿気をさけて保管する
ロンゲス、ゼストリル
- 一般名:リシノプリル
- 24時間の安定した降圧作用が期待できる
- 慢性心不全に適応を持つ
コバシル
- 一般名:ペリンドプリル
- 高血圧性の心肥大を抑える作用や動脈に対する改善作用(血管リモデリングの改善作用)などが期待できるとされる
その他にもいくつかACE阻害薬は発売されていますので、ここの記載の薬剤がすべてではありません。有名な話ですがアデカットは武田薬品のACE阻害薬。TAKEDAを逆からADEKAT。
臓器保護作用
ARBで認められる臓器保護作用はACE阻害薬でも認めらえる。ACE阻害薬で目立つのは心臓への作用。それはラミプリルを用いた臨床試験で正常血圧にも関わらず心血管死、心筋梗塞、心不全が減少することが証明され、ACE 阻害薬には降圧を超える心血管保護効果があると期待されたため。現在は有名なところだと「ONTARGET試験」においてARBとACE阻害薬に差が認められていなかったので、同等くらいではないとイメージしておけば問題なし。もちろん細かい違いや使い分けを気にしているDrもいるので注意してください。